vol.8
『音作りは、曲芸師のごとく』
良い音が出た時に、しゃべるのも もどかしく楽器を口にあて、
そのままの状態でもう一度と願う方がいらっしゃいますが、
もちろん息の方向性は大切ですが、
フルートの音を生み出す空気の渦は、
息すなわち からだの内側の空気と、外側の空気の間で生まれ、
そのバランスで保たれるので、
同じつもりの口の形からは、同じ響きの音は生まれ難い 。
玉乗りの曲芸師がじっとして見えているようでいて、
常に左右のバランスを取っているように、
流れる空気が生み出す音は、空気量、からだの共鳴箱の状態が刻々と変化する中で、
楽器に働きかける事ばかりを考えるのではなく、
口腔、からだで 共鳴する響きと、空間での響きのバランスを取ることで保たれる。
同じ状態があるのではなく、常に音を聴くことで、
自分では感知できないような微妙なバランスをからだが取ってくれる。
ただ、吹き手が理想とする音のイメージを確固と持っている中からのみ、
すばらしい音は生まれ出す。
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